季節ごとに、小鳥さんと一緒に生活する上での注意事項をお知らせしています。
少しでも小鳥さんのことを知って、お役に立てればと思います。
ヨウムさんの腺胃拡張症
2025.03.01
三寒四温の言葉どおり、まだまだ肌寒い日と、春の温かさを感じられる日が入り混じる季節となりました。
今回は、ヨウムさんのご家族様に知って頂きたい、腺胃拡張症についてお話します。
オウムの腺胃拡張症(PDD、Proventricular Dilatation Disease)とは、ウイルス感染が原因で腺胃が拡張し、消化管のはたらきが低下する病気です。
2009年にPDDの小鳥さんからボルナウイルスが検出され、原因ウイルスとして強く疑われています。
従来までは、パラミクソウイルスが関連しているという説もあり、発症のメカニズムがまだ解明されていない病気のひとつです。
すべてのオウム目の小鳥さんに感染し、ヨウムさんとルリコンゴウインコさんに特に多い傾向があります。その他、コンゴウインコさん、バタンさん、ボウイシンコさんなどでもみられます。
平均の発症年齢は3〜4歳で、比較的若い小鳥さんに発症する傾向があります。
感染した小鳥さんとの接触などで、ボルナウイルスがカラダの中に入ってしまうと、神経に潜伏するとされています。
症状が出るまでの潜伏期間には小鳥さんによって個体差があり、短くて数週間から、長いと2年以上の子も報告されています。
発症すると急激に悪化する可能性があり、命に関わることもあります。
PDDを発症すると、次のような症状が表れます。
①消化器症状
ウイルスによって、消化機能を調整する自律神経のはたらきが障害され、そ嚢、食道、腺胃、筋胃、腸の運動が低下して拡張が生じます。
そ嚢や胃腸のうっ滞により、そ嚢液などで細菌が増殖し、急激に体調が悪化するリスクがあります。
・食欲の低下
・嘔吐
・(発酵臭など)においが強い
・下痢
・砂のような粒が混じった未消化のうんち
・元気消失や沈うつ
・体重の低下
などの症状がみられることがあります。
②神経症候
神経に感染したウイルスにより、神経の伝達やはたらきが阻害され、症状が急激に悪化する可能性があります。
止まり木に上手く止まれずに落ちるなどの運動失調、歩行異常、頭部振戦、てんかん発作などが代表的な症状です。
現在、PDDを完治できる治療法はなく、小鳥さんやご家族の負担を軽減し、小鳥さんの生活の質を向上させることを目的とした対処療法を行うことがほとんどです。
神経の炎症を抑えるお薬や、腺胃拡張症の小鳥さん用の療法食を使うこともあります。
また、止まり木を滑りづらい素材に太くしたり、低い位置にするなど、生活環境の改善が必要なこともございます。
当院では、おうちの小鳥さんの健康診断や、ごはんのアドバイスなど積極的に行っております。
気になる症状や、ご不安なこと等ございましたら、ご相談ください。